カメラマンの業界から敬遠されているウエディングという撮影

 様々な業界のフリーカメラマンの面接や現場でカメラマンと出会って話を聞くと、本当に「結婚式の写真が撮りたい」というカメラマンは半数程度でした。つまりあとの半数は極端に言うと「結婚式の写真撮影をしたくない」というカメラマンです。

 ではなぜ結婚式の撮影は敬遠されるのか、そしてそんな敬遠されている業界の門をわざわざ叩くのはなぜかをまとめます。まずは敬遠されている主な3つの理由から。

 

1. 結婚式という一生に一度の記録撮影の責任が重い。

 ウエディングキスシーンやケーキ入刀など結婚式にはメインイベントと呼ばれるシーンがいくつもあります。それらは主役のお二人を含めゲストの皆様にも心に残るシーンとなりますので絶対的にステキな一枚を撮らなければいけません。当然、移動していて撮り逃したりカメラの設定が合わずに真っ白のなったり、ピントが合わずボケた写真になってしまった…と言うのはNGです。

 最悪なのは寝坊して間に合わない、カメラが壊れて撮影できない、撮影後にデータが全部消えてしまったという事。ない事ではない話ですが、これら最悪を考えて常に撮影を行わなければいけません。

 

2. どんな状況でも順応し最適の写真を撮る技術力の高さ。

 結婚式ではスタジオの様に一定のライトがあり常に同じカメラの設定で撮影が出来ません。基本的には設定をマニュアルでその都度、撮りたい画をイメージして設定を変えます。ましてや室内だったり外だったり、大きな窓で逆光だったりスポットライトがあたったり。撮影に夢中になって同じ設定で撮っていたら気がついたら真っ黒の写真ばかりになってしまいます。

 知識のないカメラマンであれば逆光に対応できず、何だかよく分からない写真になってしまったり、集合写真で後ろの人の顔がボケてしまったり。その場の状況と求められている写真に合わせて設定を瞬時に合わせる冷静さと技術が最低限必要になります。

 

3. 年間で撮影数に波がある為、安定しない。

 結婚式と言うのは毎日必ずあるものとは限りません。特に9月から12月の繁忙期と1月の閑散期では雲泥の差がありますし、フリーのカメラマンが毎回撮影を依頼してもらえるとも限らないのが現実です。

 会社側からしてもせっかく契約して頂いたカメラマンに依頼できる婚礼数がないのも残念な事ですが、ひと昔前の意識のままで運営している会場側やカメラマン側にも少なからず疑問を感じています。兎角、カメラマンにも稼ぎが必要ですしその手段として波があっては見込みも立たず敬遠されてしまいます。

旅と生活と写真-婚礼撮影

 主な理由としては上記の3点が考えられます。しかし…その理由を踏まえても非常にやりがいを感じられる上に、自分自身を追い込んでいく事で高い技術を得る事が出来ます。どの業界にいてもそうですが、自分が出来る事よりも出来ない事をクリアにして取得する事ほど楽しい事はないのではないでしょうか?

 特に婚礼撮影では同じ場所はあっても同じ人や同じ状況がまた訪れる事はありません。その中でもベストを尽くしつつも言い訳のない写真を撮らなければいけません。とにかく主役のお二人に喜んで頂く為、後日写真を見ながら当日の感動以上に感動をしているお顔を思い浮かべながら撮影が出来なければいけません。それを考える事が出来れば、どうやって素敵な写真が撮れるかを必死に考えるはずですから。

 しかし商品等の物撮りはクライアントからの注文通り、しっかりと商品を撮影すれば良く、そこに時間の制限や撮り逃しがおこる事はまずありません。撮影後にクライアントが確認をし、何か違っていれば撮りなおす事も可能です。つまりこの場合、シャッター一押し、写真一枚に対する意識が全く異なってくる事になります。

 

 では、これだけ責任も重く敬遠されている婚礼撮影の門を叩く方がいるか…これは撮影業界に限らない事ですが、もっとも誰でも使えるデジタル機材の普及とカメラマンの増加、それに伴うギャラの低下から他の撮影依頼が減ったり生活費が賄えず、いよいよ最後の頼みでやってくる人もいます。

 カメラ機材は持ち合わせていますからカメラマンとして頭数にはなりますが、果たして婚礼撮影に向き不向きかどうか…実際に現場で研修をしてみてその後に音信不通になってしまう人もいます。良い年齢なのに。

旅と生活と写真-wedding

 本当に婚礼撮影が好きで技術を高めていける人には実に楽しく感動的な撮影だと思っています。一期一会の出会いながら、至福の瞬間をお二人に代わって記録する事が出来る。その写真に喜びを感じて頂ければ最高の仕事だと思います。

 その高い技術を取得していけば、他の業界のどんな撮影も一通り出来るようになりますし、その経験がまた婚礼撮影に活きてきます。そうして自己満足と他者満足をイコールにぐぐっと近づけていく事がウエディング撮影の醍醐味であってほしいです。

旅と生活と写真|菊川 貴俊