ウエディングカメラマンの心得

 カメラマン業界の中でもウエディングは特殊な撮影だと思っています。スナップというリアルタイムを記録するものから型モノ撮影、時間の制限がある中でプロが相手ではなく、それでも素晴らしい写真が求められる世界。事実、スタジオや広告業界で著名なカメラマンが撮った婚礼写真を見ても決して上手と言える物ではありません。

 ではなぜ特殊な撮影であり、著名なカメラマンだからといって素敵な写真が撮れないのか…まずはウエディングカメラマンとしての心得として3つまとめてみました。

 

1. 結婚式ではカメラマンが主体となってはいけない。

 結婚式の主役は誰でしょうか?おそらく100%の方がご新郎ご新婦様やご親族と答えるでしょう。それでは主役と当日まで段取りをし、当日の全てを仕切っているのは誰でしょうか?お二人が当日を存分に楽しんで頂く為に、縁の下に回って準備や管理をしているのは誰でしょうか?この方たちの許可もなしにご新郎ご新婦様を連れ回す事は許されるのでしょうか?よく分からない写真を撮りたいが為にゲストの視界を遮って棒立ちになっていて良いのでしょうか?

 ウエディングカメラマンは挙式披露宴が始まってしまえば、90%は黒子の存在です(残りはお二人のポーズ撮影や各卓撮影等でご誘導できます)。僕はゲストの写真にも映像にも写らない様にも努力しています。しかし、初めてお会いする方々と昔からの友達であったかの様に親身になって接しています。「おめでとうございます」とお辞儀をする事も必要です。会場のスタッフに恥じない振る舞いを心掛ける。それらの心得が絶対的に必要です。

 

旅と生活と写真|weddingphoto

 

 

2. 当日の進行と撮り所を事前にイメトレする。

 結婚式の醍醐味として、同じ方々や環境に遭遇する事はまずありません。当日になってみないと天気も分かりませんから、いつもの露出設定で撮れるとも限りません。唯一、事前に分かる事は当日の進行です。進行とはお二人がいつどこで何をするかがまとめられたもので、それにそって当日は動き物事が進んでいきます。そして会場のスタッフ全てがその進行に沿って動きます。

 進行を予め頭に入れた上で、どこで何が起こるから先に撮りどころが分かるし、時間に余裕があるかないかを把握できます。それが分かれば飛躍した話にはなりますが、事前にどこで何枚撮影ができて全部で何枚の写真が納品出来るかが分かります。必ず撮らなければいけないシーンをどの時間で撮影をするべきかを考え、当日挑む事ができます。

 場数を踏んでいればイレギュラーな出来事に対しても対応出来ますが、頭に入っていないうちは他会場のものでも同進行と照らし合わせながら写真の流れを確認する様にしましょう。

 

 

3. 準備を徹底し事故を未然に防ぐ。

 撮影や写真を残す上でのスキルと事前準備で重点を置くべきなのは後者です。いくらスキルを持っていようが、撮影中にSDカードが入っていない…電池が切れてストロボが発光しない…稀にフリーのカメラマンが起こしがちな失態です。まさか自分が…と思っていても準備を万全にせず、起こってしまってからでは遅いのである。ましてや一生に一度の結婚式の舞台を記録出来ないとなったら仕事としても大惨事になってしまいます。

 私は電池やカメラの点検を前日の夜に行い、カメラバックに閉まってから就寝し翌朝、会場に向かう様にしている。また習慣として、会場でカメラをセットした後で、2つのカメラの時計を合わせる様にしている。これは後で編集する時にずっと楽になるからではあるけど、とにかく万が一最悪の事が起こらない努力をしています。ミスが起こる可能性を潰していく事で成功にも近づく上、新しいチャレンジが可能になり、最もこのスキルこそが人としても大切な事だと考えています。

 

 また、前述した心得よりも更に現場での仕事術として「ウエディングフォトグラファーの本当の仕事を教えます。」をまとめているので、結婚式の当日の様子などを知りたい方は是非一度目を通して頂ければと思います。

旅と生活と写真|weddingphoto04

 ただ与えられた物や瞬間を撮れば良いのではありません。偶然そこに居たから撮れた写真は僕から見ると明らかで、残念な写真が多いです。あなたがプロとしてお金を頂いて撮影をする自覚のあるカメラマンであれば、どういった写真を撮る為に先に進行を読み、ポジションを取り、カメラを構えた時にその撮りたい瞬間がやってくるはずです。また結婚式がどういった業態か理解していれば、撮影にあたっての心配りやお写真を届けるまでが役目である事は知っていて当然かと思います。

 決して素敵な写真を撮る事がウエディングカメラマンの全てではないのです。

 旅と生活と写真|菊川 貴俊