盆栽(ぼんさい)をイメージした時、少なからず老人が軒下で日向ぼっこしながら枝を剪定(せんてい)している姿を連想するのではないでしょうか。僕もそのイメージを持っていた一人で、のんびりと余暇を楽しむ為であったり、自然と対峙しながら時間を愉しむものであると思っていました。
しかし、Bonsai(盆栽)として世界に広まり独自の発展を見せている記事を読み、改めて盆栽に興味を持ち調べてみると、フィギュアや装飾物などで植物以外に装飾されたジオラマの様にドラマ性を持つ「マン盆栽」なる新しい盆栽の形が生まれていたりと興味深いものでした。そこでビックリしたBonsai(盆栽)の姿をまずはご覧下さい。
いやはや盆栽のイメージを尽(ことごと)く払拭されるかの様な姿…僕としてはこれはこれでありだと思うし、立派だけど。盆栽としての目的や愉しみを履き違えていると思うし、欧米的だなーと。これをBonsai(盆栽)と呼んでしまうと、日本人らしい侘び寂びであったり風情を感じるという文化が台無しになってしまっていると思いますが…
さて、折角なので盆栽の歴史を紐解いてみます。
平安時代に中国の唐から「盆景(ぼんけい)」として日本に入ってきたのが始まりと言われています。時代の移り変わりとともに武士の仕事が減り、武士の副業として盆栽の栽培が盛んとなり、明治時代に入っても粋な趣味や行為として広がっていきます。しかし戦争や高度経済成長に差し掛かると、管理や育成に手間や時間が長くかかる盆栽は、徐々に時間的に余裕のある熟年層の愛好家が中心となっていきました。
この頃のイメージが強い為か、年寄り臭い趣味として捉えられがちになっていますが、1990年代以降になると海外でも盆栽が注目を集め始め、お手頃な盆栽が販売されるなど日本国内の若者の間でもクールな趣味として再注目されるようになりました。特にヨーロッパでは日本語のままBonsaiとして高い人気があり、アメリカを含め多くのBonsai雑誌や盆栽協会があるどころか、イタリアには盆栽の専門学校まであるほどです。
2000年以降、盆栽が世界的に注目されている事を示すものとして輸出額の増大があります。JETRO(日本貿易振興機構)の発表を見ると、2001年時点で6億4000万円だった盆栽と庭木を合わせた日本の輸出額は、2011年には過去最高の67億円と10倍以上の伸びとなっているのです。
輸出元となる日本国内での盆栽の主な生産地は、香川県鬼無(きなし)地方は松盆栽のシェアが8割を占めます。その他にも盆栽育成の盛んな地域として、埼玉県さいたま市には、盆栽町という地名があります。
海外で独特な発展を遂げた「Bonsai」は独創的なものなど、日本人目線からすると、もはや反則…盆栽のルールから外れた新しい文化として見ることが出来るかと思います。元々の盆栽の醍醐味(だいごみ)としては、自然の風景を植木鉢の中に収め、独自に切り取って作り出すところです。それぞれの植物(松、真柏、ウメ、サクラなど)の、山々や庭園で見られる大木の姿をそのままに、鉢の上に縮尺して再現し楽しむのもとして用いられてきました。その中で、剪定(せんてい)を施したり、自然の景観に似せるために枝を針金で固定したり屈曲させたり、または岩石の上に根を這わせたりと様々な技巧を競い鑑賞する事楽しみの一つとされています。手間と時間をかけ、生きた植物故に「完成」というものがなく、常に変化するのも盆栽の魅力の一つです。
これらの歴史や魅力を踏まえた上で、それぞれに盆栽を楽しみながらも、盆栽の醍醐味である自然を慈しみ風情を感じる時間を大切にしていきたいなと感じます。最寄りのホームセンターやフラワーショップ、稀に路上でも手頃な価格から盆栽をはじめる事が出来ますので、じっくりと時間をかけて育成してみてはいかがでしょうか。